「削らない歯医者がいい」は半分正解。MI治療という考え方をやさしく解説

先日、娘の同級生のお母さんから、こんな相談を受けました。

「削らない歯医者さんって、このへんにない?」

聞けば、前に通っていた歯科医院で説明もほとんどないまま奥歯を削られたことがあり、それ以来どうしても足が向かないのだそうです。

その気持ち、とてもよく分かります。

私自身も子どものころは歯医者が大の苦手で、あの音と振動を思い出すだけで肩に力が入るタイプでした。

はじめまして。
堺市東区で、地域の情報や子育て・健康まわりの記事を書いている矢野千夏と申します。

ライターになる前は、大阪市内の歯科医院で7年間、歯科助手として働いていました。
今は中学2年の息子と小学4年の娘がいて、息子は小学生のときに小児矯正を、娘は今もフッ素塗布で定期的に通っています。

診療室の中と、患者の家族という外側と、両方から歯科医院を見てきたことになります。

その立場から正直に言うと、「削らない歯医者がいい」という考え方は、半分は正解です。
ただし、残りの半分はかなり危うい思い込みでもあります。

この記事では、削る量を最小限にするという世界共通の考え方「MI(ミニマルインターベンション)」がどういうものなのか、どこまでなら削らずに済むのか、そして「削らない」を掲げる歯科医院を見るときにどこを確認すればいいのかを、できるだけ専門用語を使わずに整理します。

読み終わるころには、「削る・削らない」を自分で選ぶものではなく、虫歯の状態によって決まるものだと分かるはずです。
そのうえで、患者側にできることが何なのかもはっきりします。

「削らない歯医者がいい」の、正解な半分と不正解な半分

まず結論から書きます。

正解なのは、「不必要に削る歯科医院は避けたほうがいい」という部分です。
これは私の意見ではなく、国際的な歯科の団体や国内の学会が、20年以上前から公式に掲げてきた方針そのものです。

不正解なのは、「削らないこと自体がゴール」だと思ってしまう部分です。
削るべき状態になった歯を削らずに置いておくと、痛みが出て神経を取ることになり、最終的には歯を失う確率が跳ね上がります。

「削る量を減らす」は世界的な合意事項になっている

歯科の世界には、MI(Minimal Intervention=最小限の侵襲)という考え方があります。

これは世界各国の歯科医師会が加盟するFDI World Dental Federation(国際歯科連盟)が2002年10月にウィーンで採択し、2016年にポーランドで改訂した公式方針です。
FDIの政策声明では、MIの目的は「できるだけ多くの健康な歯質を残し、生涯にわたって歯を機能させ続けること」だとされています。

つまり「なるべく削らない」は、一部の歯科医院が打ち出しているセールスポイントではなく、業界全体が共有している前提だということです。

学会自身が「患者に混乱が生じている」と認めている

ここからが、この記事で一番お伝えしたい部分です。

日本歯科保存学会が公開している『う蝕治療ガイドライン』には、こんな一文があります。

現実には、旧来のパターン化した方法で健全歯質が大量に切削されたり、またいわゆるMIによるう蝕治療とは言ってもエビデンスに基づいて実施されている場合も、そうでない場合もある。そのため、いろいろな治療法が混在し、臨床の場は言うにおよばず、学生や臨床研修医の教育現場でも、また治療を受ける患者にも戸惑いや混乱が生じている。

学会自身が、「MIを掲げていても、根拠に基づいてやっている場合とそうでない場合がある」と書いているわけです。
そして、その結果として患者が戸惑っているとまで認めています。

「削らない」という言葉は、それを掲げている歯科医院の質を保証してくれません。
だからこそ、患者側がその言葉の中身を知っておく必要があります。

MI(ミニマルインターベンション)とは何なのか

MIという言葉を、歯科医院のサイトや院内ポスターで見たことがある方もいると思います。

日本語では「最小限の侵襲」と訳されますが、これだけではさすがに分かりにくいので、中身を分解してみます。

MIは6つの要素でできている

FDIの声明では、MIは次の6つで構成されるとされています。

要素具体的にどういうことか
早期発見とリスク評価虫歯を早く見つけ、その人の虫歯のなりやすさを評価する
再石灰化溶けかけたエナメル質や象牙質を、削らずに修復に向かわせる
健全な歯を守る対策まだ悪くなっていない歯を、悪くしないための予防を行う
個別の来院間隔リスクに応じて、次の来院時期を一人ひとり変える
最小侵襲の外科的処置削る必要があるときは、必要な範囲だけを削る
修復物は交換より補修詰め物に不具合が出たら、全部やり直さず部分的に直す

注目していただきたいのは、6つのうち削ることに直接触れているのは5番目だけだという点です。

残りの5つは、そもそも削る事態にならないようにする話と、削った後の管理の話で占められています。
MIは治療テクニックの名前ではなく、虫歯との付き合い方の全体設計だと理解したほうが実態に近いと思います。

「削らない主義」ではなく「削る範囲を絞る」

同じく『う蝕治療ガイドライン』には、削る場面についてこう書かれています。

歯質を削るという外科的な介入は、例えば、う蝕の進行を停止させることができないう窩がある場合や、機能的あるいは審美的な要求がある場合に限るべきである。歯の切削に際しては、極力天然歯質を保存するよう努め、切削するのは破折しそうなエナメル質と感染した象牙質のみに限定するべきである。

「削るべきではない」とは書かれていません。
「削る場面を限定し、削る範囲を限定する」と書かれています。

さらに同じ文書には、窩洞(削って作る穴の形)について「あらかじめ窩洞の形が決められるものではない」という記述もあります。
感染の広がり方は歯ごとに違うので、削る形も一つひとつ違って当たり前だという意味です。

歯科助手として働いていたころ、先生によって削る量がずいぶん違うことが不思議でした。
今にして思えば、それは腕の差というより、この考え方をどこまで実践しているかの差だったのだと思います。

なぜ削る量を減らすことが、歯の寿命に効くのか

「削る量が少ないほうがいい」と言われても、削って詰めれば元通りに見えるのだから、そこまで神経質にならなくてもいいのでは、と感じる方もいるかもしれません。

ところが、数字を見ていくと話が変わってきます。

抜歯の最大の原因は、実は虫歯

厚生労働省のe-ヘルスネットに掲載されている「歯の喪失の原因」というページに、2018年の全国調査の結果が紹介されています。

全国2,345の歯科医院で実際に抜かれた歯を調べた結果、抜歯の原因は歯周病が37%、虫歯が29%、破折(歯が割れること)が18%でした。

ここで重要なのは、次の指摘です。

破折の多くは神経を取った歯で起きており、その原因をたどれば虫歯にいきつきます。
そのため虫歯由来の抜歯は合計47%となり、抜歯の最大の原因になる、と書かれています。

歯周病が一番の原因だと思っていた方も多いのではないでしょうか。
私も歯科助手時代はそう思い込んでいました。

抜かれた歯の37%には、被せ物がしてあった

この調査の元データは、8020推進財団の『第2回 永久歯の抜歯原因調査 報告書』として公開されています。

患者6,541人、抜歯8,003本を対象にした調査で、抜かれた歯がどんな状態だったかも集計されています。

  • 冠(被せ物)がしてあった歯:37.0%
  • 虫歯の状態だった歯:34.1%
  • 健全な歯:18.6%
  • 詰め物がしてあった歯:8.5%

抜かれた歯のうち最も多かったのは、未治療の虫歯ではなく、被せ物をした歯だったということです。

e-ヘルスネットも、喪失リスクの高い歯として「クラウン(冠)装着されている歯」を挙げ、その理由を「この治療が施された歯は無髄歯である場合が多く」と説明しています。

やり直しが繰り返されると、歯は痩せていく

ここまでの話をつなげると、歯を失うまでの流れが見えてきます。

削って詰める。
数年後、詰め物との境目から虫歯が再発する。
今度はもう少し大きく削って被せる。
さらに進んで神経を取る。
神経を失った歯はもろくなり、いずれ割れて抜歯になる。

一度削るたびに、次に削れる歯質は減っていきます。
だから治療の入り口で削る量を1ミリでも減らしておくことが、20年後、30年後の歯の本数に効いてくるわけです。

e-ヘルスネットの「むし歯の特徴・原因・進行」には、こうも書かれています。

むし歯の治療は、崩壊した歯質を歯科材料で置き換えるのが主な方法であり、元の健全な歯に回復するわけではありません。

治療した歯は「治った歯」ではなく、「材料に置き換えた歯」なのです。
虫歯の統計で治療済みの歯も虫歯としてカウントされるのは、そういう理由です。

削らずに済む虫歯と、削るべき虫歯の境界線

では、どこまでなら削らずに済むのでしょうか。

ここが「半分正解」の残り半分にあたる、いちばん大事なところです。

歯は、表面ではなく内側から溶ける

e-ヘルスネットの「むし歯の治療の流れ」によると、虫歯の始まりは歯の表面が溶けることではありません。

表面の下の層から先に溶けていきます。
これを表層下脱灰層と呼びます。

この段階なら、唾液の中のカルシウムが溶けた部分に入り込み、修復に向かいます。
これが再石灰化です。

つまり、表面に穴が開く前であれば、削らずに元に近い状態へ戻せる可能性があるということです。

ところが、同じページにはこう続いています。

表層下脱灰層はある程度以上大きくなると、表面のエナメル質が割れてしまい大きな穴になってしまいます。この状態になるともう治ることはありません。

穴が開いた後は、フッ素を塗っても、どれだけ丁寧に磨いても、その穴が自然にふさがることはありません。

「削らない治療をしてくれる歯医者を探し続けているうちに、穴が広がってしまった」というのは、いちばん避けたい展開です。

学会が示している「削る」判断基準

『う蝕治療ガイドライン』には、どの程度進行したら削るのかという基準がはっきり書かれています。

所見内容
穴の確認歯面を清掃・乾燥した状態で、肉眼または拡大鏡で穴が確認できる
自覚症状食べ物が挟まる、冷たいものがしみるといった症状がある
見た目の問題審美的な障害の訴えがある
エックス線所見エックス線写真で象牙質層の3分の1を超える病変が見られる
リスクその人自身の虫歯リスクが高い

これらが当てはまる場合は修復処置の対象で、特に複数当てはまるならただちに処置することが望ましい、とされています。

私がこの基準を見て思うのは、削るかどうかは患者の希望で決まるものではないということです。
「削らないでほしい」という希望は伝えていいのですが、判断そのものは歯の状態が決めています。

なぜ歯科医師によって判断が違うのか

「A医院では削ると言われ、B医院では様子を見ましょうと言われた」という経験がある方もいると思います。

これも、ガイドラインが正直に認めています。

奥歯の噛む面の内部で進行する虫歯や、歯と歯のあいだの初期の虫歯については診断にばらつきが大きく、削るかどうかの判断基準が歯科医師のあいだで定まっていない、という趣旨の記述があるのです。

さらに、先の尖った器具(探針)で強く探ると、まだ元に戻せる状態の溝を器具で壊してしまう懸念があることも指摘されています。

つまり、意見が割れること自体は珍しくありません。
納得できないときにセカンドオピニオンを求めるのは、わがままでも失礼でもないということです。

その際、エックス線写真を撮っているか、その画像を見せながら説明してくれるかは、確認する価値があります。
穴が見えていない虫歯の判断には、エックス線検査の併用が必要だとガイドラインでも強く推奨されています。

「経過観察」は「放置」とはまったく違う

「今回は削らずに様子を見ましょう」と言われて、そのまま何もせずに次に行ったときには削ることになっていた。
これは私が診療室で何度も見てきた光景です。

経過観察と放置は、まったく別のものです。

非切削で管理するときの中身

日本歯科医学会が令和6年3月に公開した「初期根面う蝕の管理に関する基本的な考え方」という文書には、削らずに管理する場合の手順が具体的に示されています。

歯の根元にできる虫歯についての文書ですが、削らない管理がどれだけ能動的な行為かがよく分かる内容です。

  • 実質欠損の深さが0.5mm未満なら非切削で管理し、0.5mm以上は削る処置の適応とする
  • 硬さを確認する触診には先の鋭利な器具を使わず、歯周プローブなどで慎重に行う
  • 家庭では1日2回の歯みがきに加え、歯間ブラシやフロス、1,450ppmのフッ化物配合歯磨剤を使う
  • 歯科医院でのフッ化物塗布はおおむね3か月ごとを目安に、その人の虫歯リスクに応じて間隔を決める
  • 口腔内写真を継続的に撮影し、変化を客観的に記録する

削らないという判断は、「何もしない」ではありません。
フッ化物を使い、家庭でのケアを変え、数か月ごとに写真を撮って記録し、進行していないか確認し続けるという、それなりに手間のかかる管理です。

『う蝕治療ガイドライン』にも、病変が拡大したかどうかを確認できるよう「病変の範囲は客観的に記録しておく必要がある」と明記されています。

歯科医院で「様子を見ましょう」と言われたときは、次の来院がいつなのか、家では何を変えればいいのかを、その場で必ず聞いてください。
それが決まっていないなら、それは経過観察ではなく先送りです。

家でできることの具体的な中身

削らずに済ませたいなら、家庭でのフッ化物の使い方は避けて通れません。

e-ヘルスネットの「フッ化物配合歯磨剤」には、年齢ごとの使用量まで示されています。

年齢濃度使用量
2歳まで900〜1,000ppmF米粒程度
3〜5歳900〜1,000ppmFグリーンピース程度
6歳から成人1,400〜1,500ppmF歯ブラシ全体(1.5〜2cm)

同じページによると、フッ化物配合歯磨剤の虫歯予防効果はおおむね24%で、1,000ppmF以上の範囲では濃度が500ppm上がるごとに予防効果が6%上がるとされています。

そしてもうひとつ、意外と知られていないのがすすぎ方です。
うがいは少量の水で1回だけにするよう書かれています。

しっかりすすいだほうが清潔な気がしますが、それではせっかくのフッ化物を洗い流してしまいます。
私も歯科衛生士さんから教わるまで、口の中がさっぱりするまでゆすいでいました。

削る量を減らすための技術と、それぞれの限界

削る量を抑えるための道具や薬剤には、いくつか種類があります。
ただし、どれも万能ではありません。

歯科医院を選ぶときに知っておくと役に立つので、限界とセットで整理します。

技術できること限界
拡大鏡(ルーペ)肉眼では見えない小さな穴や境目を確認しながら削る範囲を絞れる見えるようになるだけで、内部の深さはエックス線を併用しないと分からない
う蝕検知液感染した部分を染め出し、削りすぎと取り残しの両方を防ぐ着色しただけの部分との判別が難しく、根拠となる研究の質は高くない
フッ化ジアンミン銀(サホライド)進行を抑えて削らずに管理する選択肢になる塗った部分が黒くなるため、事前の説明と同意が必要
補修修復詰め物の不具合を全部やり直さず部分的に直し、歯質を多く残せる二次う蝕への効果は臨床研究が乏しく、専門家の合意にとどまる

う蝕検知液については、『う蝕治療ガイドライン』が「確実に感染歯質を除去し、過剰切削を回避することができる」として使用を推奨しています。

一方、フッ化ジアンミン銀を使う場合は、日本歯科医学会の文書に「う蝕病変部が黒変することを、患者、家族、介護者に説明し、承諾を得る必要がある」と明記されています。

子どもの前歯に使えば黒く残ります。
進行は止まっても見た目は戻らないので、どこに使うかは相談が必要です。

こうして並べてみると、削らずに済ませるための道具はどれも「歯科医師の判断を助けるもの」であって、判断そのものを肩代わりしてくれるわけではないと分かります。

設備の有無より、その設備を何のために使っているかを説明できるかどうかのほうが、はるかに重要だと私は思っています。

では、どんな歯科医院を選べばいいのか

ここまでを踏まえて、私がママ友に聞かれたときに伝えている確認ポイントをまとめます。

  • エックス線写真や口腔内写真を見せながら、なぜ削るのか(削らないのか)を説明してくれる
  • 「様子を見る」と言われたときに、次の来院時期と家でやることをセットで示してくれる
  • 削らない選択が適切でないケースについても、正直に話してくれる
  • 治療後の予防やメンテナンスの話が、治療の話と同じくらいの熱量で出てくる
  • 生活リズムのなかで無理なく通い続けられる場所と時間帯にある

最後の項目は医学的な話ではありませんが、実際にはこれが一番効きます。

削らずに管理するという選択は、数か月ごとに通い続けて初めて成立します。
仕事や子どもの予定で通えなくなった時点で、それは管理ではなくただの放置に変わってしまうからです。

「削らない」と「放っておいても治らない」を両方書いているか

歯科医院のサイトを読むとき、私は「削らない」という言葉が単独で置かれていないかを気にします。

削る量を抑える方針と、削るべきときは削るという説明が、同じサイトの中に両方あるか。
そこに、その医院がMIをどう理解しているかが出ると思っています。

両方きちんと書いている例として、私が住んでいる堺市東区のひきしょう歯科クリニックの公式サイトを挙げておきます。

このサイトには「MI(ミニマルインターベンション=最小限の侵襲)の考えに基づき、拡大鏡(ルーペ)等を用いて『悪い部分だけを精密に削る』ことで、健康な歯質と神経を可能な限り残します」と書かれている一方で、虫歯治療のページには「残念ながら虫歯は放っておいても絶対によくなりません」「放っておくと、残せたはずの歯を失うという、最悪の結果にもつながります」とも書かれています。

さらに、麻酔についても「どんなに腕の良い歯科医師でも、痛みを防げないケースは多々あるのです」と、できないことまで正直に書いてあります。

集患のことだけを考えるなら、こういう都合の悪い一文は書かないほうがいいはずです。
それでも書いてあるサイトは、私は信用度が高いと感じます。

ちなみにこちらは南海高野線の初芝駅から徒歩3分で、月曜から土曜と祝日は夜20時まで、日曜も18時まで診療しています。
数か月ごとに通い続ける前提で考えると、この通いやすさは軽視できない条件です。

もちろん、どの歯科医院が合うかは人によって違います。
ここで挙げたのはあくまで「サイトの読み方」の一例として受け取ってください。

子どもの歯科健診で「CO」と言われたら

最後に、子育て中の方に向けて一つだけ。

学校の歯科健診で「CO」という記号を見て不安になった経験はないでしょうか。
COは、穴は開いていないけれど白く濁っていたり茶色く見えたりする、虫歯になりかけの歯を指します。

日本学校歯科医会の説明によると、学校での歯科健康診断は「異常なし」「定期的観察が必要」「専門医(歯科医師)による診断が必要」に振り分けるスクリーニングであり、確定診断を行うものではないとされています。

つまりCOは、「虫歯です」という宣告ではなく、「歯科医院で詳しく見てもらってください」という合図です。
そして、この段階こそが削らずに済ませられる可能性が最も高いタイミングでもあります。

日本歯科医師会が運営する「テーマパーク8020」でも、歯の表面が白く濁った初期の段階であれば、適切な手入れによって元の状態に戻る可能性があると説明されています。

もう一点、お伝えしたいことがあります。

子どもに虫歯が見つかると、自分の仕上げみがきが足りなかったからだと落ち込む方がとても多いです。
私も息子の奥歯に小さな虫歯が見つかったときは、しばらく引きずりました。

ですが、生えて間もない永久歯は石灰化が未熟で、酸に弱い状態が数年続きます。
親の努力だけでどうにかなる話ではありません。

厚生労働省の令和6年歯科疾患実態調査によると、80歳で20本以上の歯を持つ人の割合は約61.5%と推計されています。
8020運動が始まった1989年ごろは10人に1人にも満たなかったと言われますから、この30年で日本人の歯は確実に残るようになりました。

自分を責めるより、削らずに済むタイミングで見つけて手を打つほうが、ずっと先につながります。

まとめ

長くなったので、要点を整理します。

  • 「削る量を最小限にする」は国際歯科連盟が2002年に採択した世界共通の方針で、特定の歯科医院の売り文句ではない
  • ただし学会自身が、MIを掲げていても根拠に基づかない例があり患者に混乱が生じていると認めている
  • 表面に穴が開く前なら削らずに管理できるが、穴が開いた後は自然に治ることはない
  • 削るかどうかは患者の希望ではなく、穴の有無・症状・エックス線所見などで決まる
  • 経過観察はフッ化物と記録と定期通院がセットになった能動的な管理であり、放置とは別物
  • 抜歯原因の47%は虫歯由来で、抜かれた歯の37%は被せ物がしてあった歯だった

「削らない歯医者がいい」は、半分正解です。

残り半分を正解にするために必要なのは、削らない歯科医院を探すことではなく、削るかどうかの判断を説明してくれる歯科医院を選び、削らずに済む状態のうちに通うことだと思います。

もし今、削ると言われて迷っているなら、まず「なぜ削る必要があるのか」を写真を見ながら説明してもらってください。
その説明が納得できるものなら、それはきっと必要な処置です。

そして、しばらく歯科医院に行っていないという方は、痛くない今こそ行きどきです。
削らずに済む虫歯は、痛くならないうちにしか見つかりません。

最終更新日 2026年7月26日 by asisps